時東《ときとう》飛羽《とわ》編

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会社のお土産が決まると お次は常務のお嬢様に何か、と 店内をウロウロとしていると 「常務。お嬢様は料理がお得意でしたよね」 「そうなんだよ。 料理教室にも通ってるんだけど 親目線じゃなくても天才だと思えるよ」 「それは羨ましい事ですが 早くお嫁に行ってしまいそうですね」 「そうなんだよな。 まだもう少し手元に置いておきたいんだよな」 常務と曽根さんの会話を聞きながら 飛羽は自分の父親のことを思い出した。 うちの父さんはどう思ってたのかな。 飛羽を手元に置いておきたいと思ってくれたかな。 亡くなって3年も経っちゃうと いない生活にも慣れてしまって 父親を思い出すことも減ってきちゃったな。 お喋りする声が聞こえなくなり ハッとして顔を上げた。 「あ、常務これなんてどうですか?」 無言になる飛羽をお2人が 心配そうな顔で見ているのに気が付き 慌ててその場にあった適当な商品を指差した。
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