時東《ときとう》飛羽《とわ》編

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洗面所からドライヤーを持ってくるのを 忘れてしまった。 取りに戻ろうか悩んでいるうちに 玄関の扉の開閉音が聞こえ 慌てて部屋の電気を消してベッドに潜り込んだ。 廊下を歩いていく音 どこにも飛羽がいないと気が付いたのか 再び廊下を歩く足音が聞こえてくると 階段を上がる床が軋む音を聞き 飛羽は布団をおでこまで持ち上げた。 トントン、と優しくノックされたあと 「飛羽?」と呼びながら扉が開かれた。 「飛羽?どうした?」 部屋に入ってまっすぐにベッドへ来る。 「飛羽?」 「んー・・・。慣れない出張で疲れた」 飛羽は布団で顔を隠したまま伝えると 「初めての出張で、しかも海外だもんな。 メシは?食ったのか?」 ギシッとベッドに腰掛けられて音が鳴り 掛け布団が引っ張られる感覚があった。
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