時東《ときとう》飛羽《とわ》編

3/313

1966人が本棚に入れています
本棚に追加
/1668ページ
満里恵は手を伸ばして ロウソクで新しいお線香に火を点けた。 「兄貴もあっさりと逝っちゃってさ。 もう飛羽しか残ってないじゃん」 恨み節を正面の棚の天辺に飾られた 飛羽の兄貴の写真にぶちまけた。 「まさか兄貴が逝くとはね。 まだ30代だったのに・・・」 飛羽も祭壇の一番上の兄貴を見つめた。 白黒の写真の中の兄貴は 子供のころから飛羽が好きだった笑顔で こちらを見ている。 飛羽が最後に兄貴を見たときは 元気のない落ち込んだ表情だった。 最期の兄貴は顔に傷をつけて 真っ青な顔色をして目をつぶっていた。 「交通事故か・・・。 私らも、事故には気をつけようね」 「そうだね・・・」 兄貴もどんなに気を付けていたって 貰い事故には気をつけようがなかっただろう。
/1668ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1966人が本棚に入れています
本棚に追加