時東《ときとう》飛羽《とわ》編

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しばらく課長と話し合いをしていた曽根さん。 「では、行って参ります」 「ああ。今日は新しい駅ビルの視察か。 都知事も視察に来られるんだろ?」 「ええ。今日の常務のスーツは 奥様が選んだ卸し立てだそうですよ」 曽根さんからもたらされた常務情報。 課長と一緒に曽根さんも笑うが 「・・・・・・ぷっ」 小さく吹き出す無礼者の飛羽。 では、と軽く一礼した曽根さんが まっすぐに飛羽の席に向かってきた。 「こら!盗み聞きだけじゃなく 常務を笑うとは何事だ」 「痛っ! 聞かれたくなかったら声を落してくださいよ」 お小言と一緒に頭も小突かれたが 泣き寝入りなどしない飛羽も言い返した。 「お前・・・・。身内が亡くなったって訊いたけど ずいぶんと元気だな」 「シクシク・・・シクシク・・・」 「アホ」 嫌味を言われたから 泣き真似を披露してやったら呆れられた。
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