時東《ときとう》飛羽《とわ》編

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「いい加減、シュリを返して!」 「・・・・・・は?」 飛羽が柊理の名前を出した途端、 外人が飛羽に向かって叫んだ。 返して? 「どういうこと? 柊理は自分からうちにいるんだよ」 「あんたが放してくれないからでしょ!」 「・・・・・違うし」 「シュリは私のよっ! さっさと返してよぉ!」 「・・・・・・・・」 見当違いな不満を叫ばれるほど 対応に困ってしまう。 ってことよりも 電車がホームに入る放送が聞こえ思い出した。 「悪いけど、私、急ぐのよ」 「待ってよ!逃げるの?」 「逃げないよ。仕事なのっ!」 「あっ!ちょっとー!」 電車に乗り遅れたら 飛行機にも乗り遅れてしまう。 柊理の彼女は見捨てて改札に向かった。 ピッと軽い音を聞きながら改札を通り ホームに向かってダッシュする後ろから 「ドロボー!あの女、ドロボーよぉ!」 外人が大声でわめいて それを遠回りに胡散臭そうに乗客が眺めてた。
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