時東《ときとう》飛羽《とわ》編

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発車のベルが鳴り響く中 扉が閉まるスレスレで車内に乗り込むと 背中で扉が閉まる風を感じた。 せっかく呼吸を整えてたのに。 あの女の所為でまた乱れた。 人が密着するほど息苦しい満員電車内で 無理やり向きを変えた。 扉に向かって立ち位置を変えると 飛羽の荒い呼吸でガラスが曇る。 いるはずだと予想着いていた柊理の彼女。 実際に目の前に現れ、この目で確認すると 「・・・・・・・・」 周りが気が付くほどにイラ立った。 なんで飛羽の元に来たのか。 しかも「返して」って・・・・。 元々飛羽の物でもないのに。 自分のものだって言うのなら 首にひもでも付けておきなさいよ。 次の駅からしばらくは 反対側の扉が開閉したのは良かった。 もし飛羽が立つ方の扉が使われるなら 周りの乗客は苛立ちをぶつけられて 迷惑をこうむっていただろう。
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