時東《ときとう》飛羽《とわ》編

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曽根さんにしたって 飛羽の前だといつもの彼とは違う。 常務やほかの人の前では 澄ました態度をとる彼だけど 飛羽の前だと素を出してくる。 普段見られない彼の密かな部分を見られ 常務も満足な様子。 「さて、さっそく仕事に向かうか」 「かしこまりました」 「イエッサー、ボス」 外国では外国なりのお返事をしたのに 包帯で吊られていない方の左手を上げ 「痛っ!」 「ふんっ!」 ゲンコツを振り落され、 涙が出そうなくらい痛かった。 あはは、と笑いながら歩き進める常務。 すぐ後に曽根さんが寄りそうように歩き 「待って待って」 スーツケースをゴロゴロと引きながら 飛羽も慌ててあとを追った。
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