宝田《たからだ》海《うみ》編

443/754
1968人が本棚に入れています
本棚に追加
/1668ページ
営業時間よりも早く 常連たちは店の暖簾をくぐってくる。 「おいおい。もう始まってるのか?」 「いらっしゃい、おんじ。 まだ始まってないんだけど、ね」 海は苦笑してビールを飲む関口たちを見た。 有賀と一緒にやってきて そこに佳恵もやってきたことで 勝手に酒を飲み始めてしまった。 料理もすでに準備万端。 あとは客が来るのを待つだけなのを見たら すぐに始めたくなって当然の事だったか。 「おんじも早く!乾杯しよ」 「おー!佳恵じゃねえか。 久しいなぁ。おめえ、男はどうした」 「はいはい!うるさい(じじい)に酒を! 早く口を塞いでしまいなさい!」 大晦日に一人で海に会いに来たってことは 今年も彼氏ができていないとの推察は おんじの孫のエミリにもできただろう。 佳恵のふくれっ面を肴に 今日何度目かの乾杯が行われた。
/1668ページ

最初のコメントを投稿しよう!