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「天音ってさ、教師とか向いてるんじゃない?」
ファーストフードでテスト勉強をしている時、ふと親友の栗山小夜が言った。
「いいかもね」と満更でも無さそうに天音が言うと、「向いてるんじゃない?」と言った本人、小夜がくすくす笑い出した。
「でもー、星は浪漫、空も浪漫な天音ちゃんだからなあ」
教師も向いてそうだけれど、研究者という道も天音には向いてそうだと小夜は思う。向かいに座る小林柚葉も同じことを思っている。
地学がしっかりと授業に組まれている学校は少ない。教師となったら理科全般を教える必要がある。
この話になると、ふたりはいつも、目をきらきらさせながら物理の授業をする天音を想像してしまう。
「うちに入ってよかった。地学の授業って、ちゃんとしてるところは珍しいんでしょ?」
天音はとなりに座っていた篠崎洸に尋ねた。天音たち三人と洸は学校が違う。
「そうだね、うちは一応やるらしいよって程度」
「天音! ここ教えて!」
突然、黙々と問題を解いていた北野舜が顔を上げて天音にねだった。
「じゃあ、舜、あたしはここ」
数学を教えてほしいと頼んだ舜に、天音は引っ掛け問題のような歴史の問題を教えてもらうことにした。
天音は理数系が得意だ。文系の科目の中で、彼女は社会科のうち歴史があまり得意ではなかった。どんなに努力をしても、テストで一番点数が稼げないのが歴史だった。
「ふたりって、苦手なものが真逆だよな」
可笑しそうに呟いた朝河真沙美は女の子ぽい名前だがれっきとした男子だ。
女子三人は共学の学校で、男子三人は男子校に通っている。どちらも県内屈指の進学校であり、全員ともに成績はそれなりに上位を占めている。
同じ教科書も多いが、中には出版元が違う。同じ内容でも言葉使いが異なることがある。舜と天音がわからないと言っ箇所は結局、教科書の交換で済んでしまった。
「天音ー、ここの文法、間違ってる」
天音と舜が教科書と睨めっこしている間に、広げっぱなしだった天音のノートを真沙美が覗き込んでいた。
「え? ほんとだ! 絶対にここ出る。ありがとう、真沙美」
このメンバーで勉強会をすると、何故かいつも天音は忙しい。
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