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「そして、リラックスするために一番大切なのが、呼吸です。深く、ゆっくりと呼吸すること。常にこのことを意識します。私たちは緊張したり、不安になったり、ストレスにさらされると、呼吸が浅くなります。現代人の多くが日々のストレスの積み重ねで慢性的な酸素不足に陥っているとも言われています。そして、身体は体調不良というかたちで必死に酸素不足であることを訴えますが、多くのひとはそれに気づかず、その結果病気を引き起こしてしまうのです」  へえ、と思った。確かに、呼吸をするのは当たり前のことで、それを普段意識したことなどなかった気がする。 「ですから、意識して深く呼吸をすれば、体調はよくなり、ストレスも消えます。心が穏やかになって、人間関係もずっとよくなります。人間は、深く呼吸しながらストレスを感じることができないからです。ですから、仕事でストレスを感じたとき、家事や育児でストレスを感じたときは、意識して深い呼吸を繰り返してみてください。そうして意識するだけで、自分の心がどれほど変化するか、その変化を楽しんで、ぜひ日常生活で試してくださいね」  それでは、始めます、ともう一度桜庭が両手を合わせた。 「これからゆっくりとした呼吸を行ないます。膝に両手を置いて、軽く目を閉じます。鼻から息を吸って、背骨を上に引き上げて。深く息を吸ったら、今度はゆっくりと鼻から息を吐いて」  呼吸に合わせながらゆったりとした声で桜庭が誘導する。 「瞑想している間、集中できなかったり頭にいろんな考えが浮かんでもまったく気にしなくて構いません。吐く息と吸う息に意識を向けて、深い呼吸を繰り返します。吸って、……吐いて……、吸って……」
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