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「……なんでこんなことで悩んでるんだろ、俺」  社会人になって二年目、大学時代の友人たちはみな菫と似たり寄ったりな忙しい状況で、気がつけば疎遠になってしまった。いま気軽に語り合える友人は、菫の側にはいない。  もしかしたら、自分は多季と友人になりたいのかも知れない。親しく名前を呼んでくれたこと、そしてまた会いたいと言われたことを、内心ではひどく喜んでいるのではないか。そう思った途端、菫は恥ずかしいような、なんとも言えない気持ちに襲われ、そんな思いを振り切るようにがばりと布団のなかに潜り込んだ。  翌朝目覚めたら、部屋には明るい陽差しが差し込んでいた。目覚まし時計を見ると午前十時前で、眠りが深かったのだろうか、頭が軽く、いつになく爽やかな目覚めだった。  ベッドから身体を起こすと同時に、腹の虫がぎゅうぎゅうと鳴り出す。しばらく考えた後、煮干しと乾燥わかめを小鍋にぶち込んで味噌汁を作り、ツナと卵とあり合わせの野菜を炒めて、電子レンジで温めなおしたご飯と一緒に食べた。  朝食を作ること自体久しぶりのことだった。特にここ最近はなにも食べずに仕事に出かけることもしばしばで、あらためて菫は自分の生活を粗末にしていたことに気づかされる。  洗濯機を回しながら部屋に掃除機をかけ、洗濯物を干し終えたところで冷たい炭酸水を飲み、一息ついた。  掃除機をかけながらふと思いついたことを、ふたたび考え始める。  ヨガを習うか習わないか。それは、多季のことはとりあえず置いておいて、自分がこの先ヨガを続けたいかという部分に心の焦点を合わせれば、簡単に答えが出るはずだ。しっかりと朝食をとり、部屋が片付いたからだろうか。昨夜ぐるぐると悩み続けていたのが嘘みたいに思考がクリアになっていた。
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