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3 ともだち
「さむっ。」
三学期が始まった。
どんなに寒くても、私の朝はゲンジ先輩の登校姿を見る事から始まる。
廊下に出て先輩を待ってる間に…気付いた事がある。
D組の教室の前に、原さん。
今まで気付かなかったけど…
彼女も、もしかしたら今までもこうやって先輩を見てたのかな。
「…驚きよね。」
奈緒が手に息を吹きかけながら、小声で言った。
「こうやって見てるとさ…先輩の事好きなのかもって思える人、あちこちにいるわけじゃない。」
そうなのだ。
左を見ると、A組の教室の前に、三人女子がいる。
そしてそれは『ただそこにいる』感じじゃない。
あきらかに、誰かを待っている。
だって、さりげないふりをして…視線は靴箱に向けられているから。
「あの先輩が、こんなにモテるとはねえ…」
「…失礼だなあ。」
とは言っても、私も驚いたけど。
「でも、ここにいるみんなが好きとは限らないよね。奈緒みたいに、私に付き合って廊下にいるだけの人だっているだろうし。」
「………」
私の言葉に奈緒はゆっくりと左右を確認して。
「…ま、A組の前にいる星野さんは、長野先輩のファンだって有名だから違うとして…」
そんな情報、どこから仕入れてくるんだ。
「その隣の高木さんと落合さんは、テニス部だからね。別れたの知ってるだろうし、盛り上がって出てきた感はあるかもよ。」
「………」
「それに、きっと一年だけじゃないよね。」
「あ。」
本当だ。
きっと二年にも、さらには三年にもいるはずだ。
先輩って…
「何だか……」
「…ショック?」
「ううん。先輩って、すごい。」
「…あ、そ…」
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