喧嘩と歩み寄る気持ち

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スーッと胸いっぱいに息を吸い込んで ハンカチを握り締めた手に力を込めた 『一緒にって?私はずっとあなたの背中について歩いていたわ! でも、気がつくとあなたの姿が見えなくなって、心細くて、ここに、この壁際にもたれて一人でため息を吐いていたの そんな私に声を掛けて飲み物を持ってきてくれたのが彼よ? 私が知り合いも居ないパーティーで取り残されて心細かったことがあなたに分かる? 一緒にって言ったけど、一緒に居たはずの私がはぐれたことに、あなたはいつ気がついたの?自分のことを棚に上げて他人を責めることなんて出来ないはずだわ! なんだか、とても不愉快。私はこれで失礼します』 睨みつけるように見上げた彼の顔に 『ごきげんよう』と 皮肉ったっぷりの笑顔を向け パーティー会場を後にした ・・・ 思いの丈を吐き出して スッキリしたはずの胸が苦しい 追い掛けてくるものと思っていたのに 彼は黙ったまま動かなかった 一人でタクシーに乗り家に帰ると 都合良く両親も出掛けていて 顔を合わせずに済んだ ・・・こんな時、普通はどうするんだろう 彼の携帯番号はおろかメールアドレスも知らない 結婚式の日取りも決まった二人なのに なにか子供のおままごとのような付き合いにため息しか出てこない 少しスッキリするかと 『あ~もぉ。やだっ』 大きな声を出してみたけれど 何も変わるはずもなく 私が一気に並べ立てた文句に 一言も返さない彼の顔が頭から離れない ・・・言い過ぎたかな 頭で考えたって 答えなんて出るはずもなく 父に聞けば携帯番号だって すぐに分かるのに そこまでは必要ないとブレーキをかける 逆に、彼だって同じ 調べようと思えば 私の携帯番号なんてすぐ手に入るはず 少し痛む胸と歯がゆい気分が 相俟ってモヤモヤする まとめ髪を解くと 気分を変えるために 頭から熱いシャワーを浴びた ・・・ ドンドンドン 扉を壊すような勢いのノック音に 気怠い身体を起こした 返事をするまで開かれない扉を開けると 慌てた様子の母が立っていた 『愛華さん、昨日一翔さんと一緒だったんでしょ? いつ頃分かれたの?今ね、あちらのお父様から一翔さんが帰ってないって連絡があったんだけど』 身振り手振りの大きな母を眺めていると 少し冷静になることができた 『私、パーティーの途中で一人で帰ったから彼のことは知らないわ 子供じゃないんだから、そのうち帰ってくるでしょ? 慌てて探すほどのことなの?いい大人を』 自分でも驚くほどの冷たい返しに 慌てていた母も少し落ち着いたのか 『それもそうね』と笑った
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