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朝の10時。
顔を刺すように冷たい空気が遠くまで澄み渡っていて、辺りは森閑としている。
ゆっくり、ゆっくりと、自分のペースで石段を昇って、ようやく境内にたどり着く。
「……ふう」
神社のてっぺん。
町を見下ろせるほどの高台。
そんな高い位置にも関わらず、ここじゃビルに遮られて初日の出も何も見えたもんじゃない。
しかも敷地面積が狭くて屋台も出てないから、そりゃ皆この町の中でも参拝者数No.1で出店もたくさん出てて賑わってる総本山の方に行くよねって感じだ。
だけど私は、こっちの神社の方が好きだ。
参拝するのにわざわざ行列に並ばないで済むし、何より人込みに揉まれることもなく静かにお参り出来る。
一人で来ても恥ずかしくないし、しかもけっこう近所だから楽な格好で──下手したらコートの下は部屋着とかでも──余裕で来れる。
閑散としているとはいっても人の姿はまばらにあるし、御守りや絵馬、護符や破魔矢なんかも売ってる社務所もきちんと本堂の傍らにある。
その社務所にはほら、ちゃんと御守りを買う人の姿だって──。
「あの、部活の御守りとかありませんか?」
「へぇ、部活?」
お参りしたら学業の御守りでも買っていこうかなと思いながら本堂の方へ歩を進めていると、売り場のおばちゃんらしき人とやり取りをする人の声が聞こえた。
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