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(あの顔の傷・・・まだくっきりと)
ぼんやり見てる僕の顔に“その人”は
気がついたようだ・・・すると、
いきなり地面に土下座を・・・した。
「すみません!すみません!」
駆けようとする父親の脚より
僕のほうが速かった。
「すみません!すみません、すみません」
僕を見ることなくただ謝る“その人”に
「頭をあげてください。
謝るのは、こちらのほうです。
母がとんでもない怪我を負わせて」
僕は手を添えた。
「いえ、私の考えが幼いあまり
御家族を不幸にしたのは私、
私なんですっ、いつか、いつか
謝りたいと・・・」
「母は再婚して幸せに暮らしてます。
どうか心の重荷は解いて下さい」
僕の言葉に、“その人”を抱き支える
父親は嗚咽した。
ふっつりと消えた外灯・・・
月明かりの下で見えた二人の“恋の疵”。
・・・僕はどうしようもなく
仁子が恋しかった・・・。
ー 了 ー
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