笑わない目

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七実は湯気の立つ無地のマグカップを、3つのせたお盆を運んできた。テーブルに置かれた時に気づいたが、何故かコンデンスミルクがある。 「はい、どうぞ」 七実は全員の前にスプーン付きのホット珈琲を置くと、陽人の前にはガムシロとミルクをひとつずつ、結貴の前には大量のガムシロ、そして自分にはコンデンスミルクを置いた。 陽人はブラックのまま1口飲むが、目の前で結貴は鼻歌を歌いながら大量のガムシロを注いでいる。そこそこ余裕があったのに、ガムシロでかさましされた珈琲は、今にも溢れそうだ。 一方七実は、コンデンスミルクを1周垂らすと、スプーンでかき混ぜた。 「……お前ら似たもの同士だな」 陽人が言うと七実は一瞬キョトンとしてから、口元をおさえて上品に笑った。 「ふふふ、兄上と似たもの同士だなんて、光栄ですねぇ」 七実は嬉しそうな声音で言うが、目は笑っていない。それどころか、冷えきっている。 「ところでナナちゃんって呼んでいい? 」 「えぇ、構いませんよ。それにしても、類は友を呼ぶ、ですね。陽人さんも素敵な殿方でいらっしゃいますね」 七実の言う通り、陽人も整った顔立ちをしている。背は結貴より低いが、それでも175センチはある。 「それはどうも。ナナちゃんだって、素敵な女性だよ」 陽人は好奇心で、彼女を褒めた。ほとんどの女性は陽人にこう言われると赤面し、中にはその気になる者もいる。どんなことがきっかけでもいいから、七実の冷めた目が変わる瞬間を見たいと思ってしまった。 「あらやだ、陽人さんにそんなこと言われたら、照れちゃいますよ……」 口調こそ初々しい乙女のものだが、やはり目は冷たいままだ。 「ふたりでイチャつかないの」 結貴が茶化すように言うと七実は恥ずかしがる素振りを見せる。 七実は珈琲片手にベッドの上に戻ると、再びパイプをゆくらせながら、甘そうな珈琲をちびちび飲み始めた。
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