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「白がダメならピンクにするわ!私ね、ビーツ入れたら綺麗なピンク色のクリームシチューになると思うの!」
「却下」
「即答!?」
「いやいや、ピンク色のクリームシチュー食べたいと思うの?」
「食べたいとは思わないわ」
「なんで作ろうと思ったの!?」
「もちろん面白そうだからよ」
にっこりと笑った咲希に乾いた笑いしか返せない。そうだ、咲希はこういう性格の女性だったんだ。忘れていたわけではないが改めて確認できたよ。まぁこういうところもユーモラスで好きなんだけどさ。
ふんふん鼻歌を歌いながらご飯を食べている咲希はとてもご機嫌そう。あ、これ絶対今度ピンク色のクリームシチューやる気だ。「めっちゃSNS映えー!」とか言ったらいいのかな?俺。
「はい、あーん」
「え、何?」
「シチューONライスも美味しいから是非」
「えー」
「私の愛情が3割増しよ!」
「えー」
「何で不満げなの!?」
「あはは、うそうそ」
テーブルから少し身を乗り出してきた咲希。その手にあるスプーンの上にはご飯とクリームシチューが一緒に乗っている。早くと急かすようにスプーンをぐいぐい近づけてくる咲希。これは食べないと解放してくれないやつだな。
仕方ないと口を開けてパクリ。そんな俺を見て満足そうな顔でまた自分のシチューONライスを食べ始めた。……うん……うん。
「どう?お味は。」
「まあ……美味しいよ、うん」
「でしょー!」
「でも俺はやっぱりこっちかな」
そう言って自分のご飯とクリームシチューを指差すと咲希は膨れてしまった。あはは、可愛いなあ。
実はさ、シチューONライスでも別にいいんだよね。初めてこのやり取りをした時にもさっきみたいにあーんをしてくれたんだけど……お?意外と平気かも?って思ったんだよね。でも咲希には内緒の話。
だってさ、言っちゃったらこの一連のやり取りが出来なくなっちゃうでしょ?そうなったら俺が寂しいからさ、嫌なんだよね。だからこれはずっと秘密。
「あ!茄子の浅漬けの汁を入れたら水色のクリームシチューになるかな!?紫芋入れたら紫色になるかも!」
「もう止めて」
やっぱり秘密にするの止めようかな。なんて思ったのはまた別の話。
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