シチューONライスはありかなしか

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シチューONライスはありかなしか

 木枯らしが吹く初冬。雪こそ降らないものの空気は冷たく、底冷えしてくるような夜だ。定時に退社したものの辺りはもう真っ暗。なんとなく気持ちも落ちてくるような気がする。あくまで気がするだけなんだけど。  早く家に帰ろう。咲希がご飯を作りながら待っている。ありきたりかもしれないけど……ずっと一人暮らしをしていたせいか、暗い夜道から家に灯りがともっているのを見るととても暖かい気持ちになる。それだけで幸せなんだと思えるんだ。結婚最高。  かじかむ手で鞄から家の鍵を取り出す。明日は手袋持っていこう……そんなことを頭の片隅で考えながらガチャリと家の鍵を回した。俺がドアを開けるとすぐに部屋の奥から「お帰りー」と言う声が聞こえてきた。何の料理かわからないけれどいい匂いもする。  エアコンの効いた暖かい部屋に温かい料理、そして大好きな奥さん。そうか、ここが天国か。 「お疲れさま。ご飯できてるよ」 「ありがとう。今日の夕飯は?」 「クリームシチューだよ」  そうでもなかったみたいだ。地獄とは言わないが暖かかった部屋の空気が少し凍った。  俺たちは気が合う──と思う。好みの音楽やドラマ、そして食。甘いものも辛いものも好き。パンよりご飯派。目玉焼きにかけるものは醤油派。エビフライの尻尾は食べない派。  テーブルに出されたクリームシチュー。俺のは茶碗にご飯、シチュー皿にクリームシチュー。咲希のはシチュー皿にご飯とクリームシチュー、要するにシチューONライスだ。  そう、俺たちは気が合う。だけどクリームシチューだけは違う。俺は絶っっっ対にクリームシチューをご飯にかけたくない!
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