一切れのケーキ

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 一目惚れ。  そんな事は今まで無かったから、驚いた。それは僕にとっての新しい感情だったんだ。  純粋そうな黒い髪は、太陽の光で天使の輪が見えた。  少し眠たそうな二重まぶたが印象に残って、家に帰ってからも彼女の事を思い出すようになっていたんだ。  他校と言う事も有り、普段は会う事も無い彼女と次に会えたのは大会の日だった。試合前に緊張しているであろうその人を見つけ、話をしに行った。  話に行ったけれど、話すことは出来なかった。  どう話すかも分からない、年上の他の学校の人にどう話していいか分る筈も無かった。  ぺこと頭を下げたくらいで、あの人が見て居たかもわからない。  時々、体育館で会っても話すことは出来なかった。  とうとう、彼女の最後の大会まで、僕は話すことなんてできなかったのだ。そんな大会で、彼女は緊張した様子で、ベンチに座っていた。 「ガンバです」  ぺこと頭を下げて声に出した。
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