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「1、2、3、4、5、1、2、3、4、5、1、2、3、4、5、………………」
背の低い和箪笥の前で正座し、両耳に人差し指を突っ込んで小声で数を唱えながら文字盤を見つめ、秒針の動きを追いかける。
針が46秒を指すのと同時に、防災無線の放送塔から、あの物悲しいメロディーが流れ始めるのを知っているから、いつもこの時間になるとこうして音を遮断する。
そして、僕は1から5までの数字を繰り返し声にしながらひたすらに待つ。
2分43秒後――18時02分29秒に訪れる解放のときを、ただただじっと待つ。
もうそろそろそのときがやってくる。
僕は耳に指を突っ込んだまま、古い置時計の隣に並んでいる、黒い額縁の中で微笑む梢の写真に向かって心の中で手を合わせ、そして呟く。
「――ごめんなさい」と。
耳を塞がずに、このメロディーと向き合える日が来るまで、どうか待っていてください。
苦しい静寂から解放された僕は立ち上がり、財布をズボンの後ろポケットに突っ込んで、台所を兼ね備えた薄暗く短い廊下をとおり抜け、玄関に向かう。
下駄をつっかけ、艶のないノブにかけた手を動かすと、錆びついた金属が軋る音が響いた。
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