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#1 後輩R~かわいすぎる冗談の裏に~
「何度もお時間とらせてすみません。ウチが落ちた理由というか、決め手に欠けた理由があれば、ぜひお聞かせ願えませんでしょうか...」
応接室で向かい合った担当者の宣伝部主任の女性に頭を下げていた。
化粧品通販会社S社の新キャラクターデザインコンペの最終選考。競合の大手代理店に負けた。
「まあ、私個人的には好きだったし部内の反応も良かったのよ。でも最終は上の判断だから、ねえ。」
大人の笑顔でさらっとかわされたが、オレが聞きたいのはそういうことじゃない。
「H社さんとのお付き合いうんぬんでのことでしょうか。」
「はっきり言うわね、かわいい人ねほんと。でも、そこはほら、聞かないでちょうだいよ、私から言えることはないわ。また次、いい仕事しましょう。」
最後まで、ウチに決めてくれる空気を感じていて、何より彼女が気に入ってくれていたそのキャラクター案は、オレの初めての大きなコンペの仕事で入社2年目の営業マンとしての最初の大きな勝ち星にしたいと、この3ヶ月意気込んできた仕事だった。
もう、聞き出せることはないようだった。言えないことが答えなのだろう。
礼を言って立ち上がり、退室しようとした。
「かわいさかな。」
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