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言うと、アミラさんは急に真面目な顔になった。
「どんなときでも平常心を忘れないのは大切なことだよ。気を張り詰めすぎてもだめなんだ。それは必要以上に自分の視野を狭めてしまう。すると、普段以上のパフォーマンスができなくなってしまうんだ。明日って言うのは今日までの積み重ねだし、それ以上にはならない。どうせ逃げられないんだから、後は考えすぎずに笑うしかないだろ」
それから、アミラさんは立ち上がった。
「それじゃあ、あたしはもう行くよ」
「もう行っちゃうんですか?」
「ノースの様子を見に来ただけだからね。怖くておもらししてないかと思ってさ」
「してませんってば!」
アミラさんはまた声に出して笑った。
「でも、もう少し一緒にいれたら、とは思いましたけど……」
アミラさんはじいっと僕の顔を見た。それから僕の額に人差し指を当て、ツンと軽く弾いた。
「これでもあたしは一途な女でね。恋人でも息子でもない男と一夜を共にするなんてごめんなんだ」
「まあ、そりゃあそうかもしれないですけど」
「あたしがいない夜は不安かい?」とアミラさんは言った。からかうような口調で、素直に肯定した方がいいのかどうか、迷ってしまった。
「いや……え……その……うん……」
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