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× × ×  「(くれない)の白雪姫」と呼ばれている少女のことを、僕はずっと昔から知っていた。 × × ×  その少女はとても美しかった。粉雪のように儚く薄い肌。サファイアみたいな澄んだ色の瞳。たんぽぽの綿毛みたいに風になびく金色の髪。柳の小枝ようにほっそりとしたしなやかな体。彼女の佇まいには、まだそうした品位や高潔さは失われてはいなかった。  反面、その少女はとても残酷だった。鎧や盾など防具の類は一切まとわず、右手で剣を、左手で魔術を操り、訓練の人形でも相手にしているみたいに手際よく人を殺してしまう。戦場では目立つ白いドレスを返り血で真っ赤に染めてしまうことから、彼女は「(くれない)の白雪姫」と呼ばれていた。  「この世で最も恐ろしいのはね、完全に心を殺した人間なんだ」と僕の尊敬する先輩がよく口にしていたのを思い出した。彼女はまさにその類の人間だった。彼女はもう、僕の知っている「彼女」ではないのかもしれないと思っていた。 「『(くれない)の白雪姫』を相手にするのは不安かい?」     
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