白雪姫の語り

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白雪姫の語り

 今でも悪夢の中で見る。私が私でなくなったあの日のことを。  父は家族のことを思い、民のことを思う、とても優しい人だった。父は国政に積極的に参加していたため、家族のことを顧みる時間などほとんどなかった。まだ年端もいかない私に寂しい思いをさせてしまうことで悩んだ父は、ある使用人の息子が私と同い年であることを知り、「あなたの息子さんと私の娘を、遊び相手にしていただけませんか?」とお願いをしたらしい。母も父の謙虚で礼儀正しい人柄に惚れ込んでいて、ノースとの出会いのいきさつを嬉々として語ってくれた。「あなたもお父様のような素晴らしい旦那さんを見つけるのよ」というのが母の口癖だった。  要するに、父は純粋で人を疑うことを知らない人間なのだ。だから、レイドゥン・ドーブリンゲンという名の憎き騎士団長に裏切られたのだ。もちろん知っている。奴が今ではトルイタム国王になっていることくらい。 「エレナ様。とりあえず、黙って私についてきてください」     
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