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 僕は話を聞き、眉間にしわを寄せた。そうか。僕の知らないところでそんなことがあったなんて。気軽に踏み込んでいい領域ではないのかもしれない。しかしそれを承知で、僕はふたたびエレナに視線を戻した。 「それから、君はどうやって生きてきたんだい?」 「ダルガと二人だけでいきていた。住む場所もなかったから、どこかの街か村で乞食まがいのこともするようになった。食べ物や、ときには金銭類なんかももらったりして。そして、私たちはある街で、親切な宿屋の主人にすみこみではたらかせてもらうことに成功した」  エレナの頬を、一筋の涙が伝った。しかし彼女は、表情を変えることなく、涙を拭うこともなく、何事もなかったかのように話を続けた。 「一応のところ、私たちはおちつくことのできる場所をみつけた。剣の基本的なあつかい方は、そのときにダルガからおしえてもらった。幼女趣味の変態におそわれそうなこともあったけれど、ダルガがまもってくれた。二人だけで不安定な暮らしをしていくのはくるしかったけれど、だからこそささやかな幸福をかんじることもおおかった」 「それで……ダルガさんは……」     
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