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 不安なことは確かに不安だったけれど、その夜は不思議と穏やかな眠りが訪れた。そして迎えたのは、いつもの朝だけれど、いつもとは違う朝だ。カーテンを開ければ陽光が差し込み、窓を開けば涼しい風と小鳥のさえずりが部屋の中に入り込んでくる。木陰に寝そべって空でも見ていたいような陽気だった。しかし寮の廊下では、すでに忙しない足音が聞こえていた。僕もさっさと朝支度を済ませてローブと杖を身につけて、集合場所へと向かった。王国の広場は途轍もない緊張感で張り詰めていたが、アミラさんの姿を見つけて、僕はほっと安堵の息を漏らした。 「おはようございます。アミラさん」 「ああ、おはよう」  アミラさんからもぴりぴりとした空気が伝わった。前日までと当日のこの違いも、いつものことだ。そしてこの日は、アミラさんは大きな胸を露出させた服を身につけていた。僕はいつも目のやり場に困り、文句のひとつでも言いたくなってしまうのだが、この格好にも意味があるのだから仕方がないと我慢する。アミラさんも彼女と同じなのだ。決して死ぬことを恐れていない。だから、強い。  僕は左胸を軽く二回叩き、気持ちを集中させる。 「ノース」     
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