15人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
「いいえ、ここは私一人ですが・・・」
男性は怪訝そうに答えた。
仕方なくSは話を続けるのだが、背後の話し声は相変わらず続いている。
「この・・・お・・・・た・・・・」
呻くような暗い声。
なんとなく中年の女性のように感じる。
すると客の男性は思い出したように身の上話を始めた。
「以前はこのアパートに妻と二人で住んでいたのですが、数年前に妻を亡くしまして・・・。」
そうしている間に背後の声はより明瞭に聞こえるようになった。
「この・・・おと・・・・ろ・・・・れた」
その時Sは悟った。
背後の声は自分に呼びかけているのだ。
そしてはっきりと聞いた。
『この男に殺された』
確かにそう聞こえたという。
Sはその声が男性の死んだ妻と関係があるのではないかと思ったらしいが、確かな事は分からない。
最初のコメントを投稿しよう!