たとえ大吉が出なくても

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たとえ大吉が出なくても

「えいえい!えいこら、えい!」  手袋をした手に持ったそれを、笑里(えみり)は何度もブンブンと振っていた。  “それ”とは、先ほど数字合わせの屋台で手に入れたばかりの、おみくじキーホルダーである。  所謂紙のくじではなく、角柱形の筒の中に入った大吉なり小吉なりとおみくじの結果が先っちょに書かれた複数の棒を穴から取り出すタイプの棒みくじ。それのミニチュア版だ。  お子さまランチのおまけだとかカプセルトイだとか、観光地のお土産屋とかで売っていそうな代物で、棒の根元に突っ掛かりがあるため穴からいちいち飛び出さない仕組みなので、何度も遊べる仕様になっている。
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