たとえ大吉が出なくても

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「えい! ……む、また小吉だ。小吉率が高いな」  ……それを笑里は、子供みたいにムキになって、何度も振って遊んでいる。  大吉を出したいのだろう。  そんな彼女をやれやれと見ながらも、俺は微笑ましくも思うのだ。  ──正月。  新しい年を迎え、おごそかな雰囲気の中にも家族連れが和気あいあいと詣でる様に暖かさを感じられる、麗らかな午後だった。  彼女──笑里も、本来兄と二人で仲良く初詣に来るはずだった。  ……が、彼女の兄貴・(よし)()に急なバイトが入ってしまい、芳葉の友達であり彼女とも幼なじみである俺が、芳葉に代わって笑里を初詣に“連れていってあげる”形になったのだ。 「……今度は凶だ。コレろくなのが出ないじゃないか、()(くる)」  沿道の流れに沿って前を歩く笑里が俺に振り向いたその顔は、明らかな膨れっ面で。  昔から年下のくせに俺の名前を呼び捨てで呼び、わがままで生意気だけど、持ち前の器量で許されてしまう──そんな笑里嬢。 「んな、俺にキレられても」と、仏頂面を返す。  ……まぁ、その数字合わせで、一番ダメな4等とか引いたの俺なんだけど。  笑里はゲームソフトを欲しがっていたが、まぁ無茶言うなって話だ。  いずれにしろ俺がおごってやったものなんだから、我慢はしてほしい。
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