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理科室から出て来た霊子達は、教室に戻るまで、一言も会話がなかった。
決して、中が悪くなった訳ではない。
ただ友を思い、其々何が出来るのか?
心の中で、試行錯誤していただけだった。
授業が始まっても悩み、何かを考えていた。
友の心の痛みをまるで自分の様に、苦しむ里奈達の気持ちは、最早家族に近い友情だった。
昔の人は友達の為に、命を落とした人も多かった。
その苦しみの感情こそ、本当の友達の証だ。
上辺だけでは、こんな気持ちは抱かないだろう。
友とは、言葉だけでは何とも軽いものだ。
人とは文字通り、支え合って初めて歩める。
彼女らは支え合い、最後まで友として進めるかるのか。
そして、放課後になってすぐに、瑠璃達が霊子の席に集まった。
元々隣の席の里奈は、なにかと授業で貸したりしてた為、席は寄り添っていた。
男子の半分は霊子に気があったが、他の女子達がいつも周りにいる為、話す機会がなかった。
それでも、諦めきれずいつチャンスが来るかとまじまじと見ている。
何故、自分を見ているのかわからなかったけど、目があった時は笑顔で手を振ってくれている事に、悪い気はしなかった。
霊子も振り帰ると、顔全体が緩んでいる。
正に、情けない男と言う感じだ。
その姿を見ていた里奈は、男子のいやらしい目線を霊子に浴びせたくなかった。
手を掴み、半ば強引に廊下に連れ出した。
後に続いて、瑠璃達も後を追った。
「どうしたの?里奈!」何が起きたか不可思議に思った。
少し顔を強張らせているが、それは男子に向けられた感情だ。
「霊子に、1番大事な事を言うの忘れてた。」
右手で顔半分を押さえながら、自分の失態と言わんばかりに言った。
大事な事と言われた霊子は、背筋を伸ばし両手を前に重ね、足を揃え、目を見ながら、まるでこれから先生からの話を聞くかのような身構えでいた。
「男子は、みんな霊子に気があるんだよ。
男ってのはね、好きな女子に優しくして自分の評価を上げるの。
だから、気をつけた方が良いよ。
霊子は凄く美人なんだから、内の男子じゃ勿体ないよ。」
「悪い人達じゃなさそうだよ。
いつも笑って手を振ってくれるし。」
笑みを浮かべるその顔は、眩しいくらいの無邪気な物だった。
里奈の父親は、不倫して女を作って出て行ったっきり返って来ない。
父で、いつも母の苦労を見てきた。
父が母の綺麗さに、一目惚れして結婚した。
手に入るとすぐに飽きるタイプの男で、結婚して間もなく不倫。
里奈が小学生の頃に、離婚した。
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