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理科室を通り過ぎると、放送室と書かれたネームプレートがある教室に、辿り着いた。
そこには放送機器しかなく、部屋は教室の4分の1位の長方形型の部屋で、奥に窓が付いていて何処にでもある教室だ。
この部屋をさらっと見渡して、直ぐさま別の教室へ足を運んだ。
次の教室は、音楽室だった。
此処は学校の1番奥の教室で他の部屋と比べ、2倍近くあり、吹奏楽部の人達が色んな楽器を使う為、広く作られていたのは明らかだった。
部屋の中には窓が8枚あり、天井の高さは3m程で、正面側には黒板と、それを遮るかの様にピアノが置かれている。
壁には、音楽に関する用紙が沢山貼られている。
霊子達はピアノを見て、歓喜していた。
里奈達はお互いにピアノを引けない事は分かっていたが、触りたい衝動を抑えきれなかった。
1番最初に触れたのは、京子だ。
弾いてる音はバラバラで、興味本意にしてみたいだけだった。
波や瑠璃も同じ感じだったが、里奈だけは広い空間を満喫して寝そべっていた。
瑠璃は弾きながら霊子に、向けて言った。
「ねぇ、霊子も弾いてみなよ。
何か記憶が戻るきっかけになるかもよ?」
戸惑いを見せたが、自然としてみたい気持ちに包まれた。
まるでこれから、演奏の発表でもするかの様な緊張した空気が張られた。
霊子は椅子に腰をかけ、鍵盤に指をそっと置いた。
体育座りをして霊子に、視線を集中させる里奈達。
霊子が、弾き始める。
ピアノから流れる音楽は、里奈達素人でさえ、分かるプロ顔負けのメロディーだった。
この曲は初めて聞いた曲であったが、その場に居た皆が、即座に霊子が作った物だと確信した。
メロディーからは、霊子がこれまで体験した絶望がそのまま曲にした悲曲の様に感じた。
その音は、聞いた人全てを悲しみに包む程、大きく体全体に戦慄が走る。
メロディーと絶望、2つが重なり合う不協和音にも感じた。
音が止む。
霊子は微笑みながら、切り出した。
「指が、自然と踊る様に引けました。」
霊子がどれだけ絶望を味わったのか、初めて気がついた。
どれだけの絶望の中、生きていたんだろう。
自分なら、生きていけるだろうか?
そんな事を、考えていた。
あまりの衝撃に、言葉が出ない。
霊子は様子の変化に気がづき、か細い声で言った。
「私、下手でしたか?」
すると我に帰り、言った。
「あまりにも、上手くてびっくりしただけ!」
里奈に合わせる様に、瑠璃は言った。
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