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幸いスマートフォンは持っている。懐中電灯アプリをつけて照らしながら、私は扉をしっかり開いた状態でドアストップで止め、中に踏み行った。
ドアの裏側なんてモノは、見ない。万が一血のあとらしきものが残っていたりしたら、一生夢で見てきまいそうである。
――大丈夫……大丈夫よ!誰もいやしないったら!!
がくがく震える足を叱咤し、スマートフォンで照らしながら奥へと進む――進む。本当に使われていない倉庫、であるのは間違いないらしかった。ちぎれた新聞紙に梱包材の破片、段ボール箱や発泡スチロール箱がごろごろと転がり、棚には何が入っているかもわからない紙袋が乱雑に積み上げられている。
さっきの音の正体が、どこかにあるはずだった。しかし探しても探しても、それらしいものが見つからない。当然、人の姿も、幽霊の姿も。
――……?おかしいなぁ、確かに物音が聞こえたと思ったんだけど…。
「誰か、いるのー?いませんよねー?」
念のため、薄暗い部屋の中に向けて声をかけるが――一切反応は、ない。
やはり、自分の気のせいだったのか。というか、こんなにごちゃごちゃしていてはモノが落ちたとしてもどれがどれだかわからないのでは、ということに今更ながら気がついた。
――なんか、急にアホらしくなってきたや。戻ろ。
そして、私は。
「………え?」
確かに開いたままにしてあったはずの扉が閉まっていることに気づくのだ。ドアストップでしっかり固定した。そのはずである。そして。
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