男たちは必ず二度家を出る

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男たちは必ず二度家を出る

 そこではいつも湿った風が吹いていた。地中海を臨む小さな漁村、男たちは夜明け前から漁に出て、朝早く帰ってくる。魚が穫れても穫れなくても、男たちの生活は変わらなかった。漁を終えると丘を越え、隣町に行く。朝から酒を飲み、ばくちを打ち、夕方帰ってくる。金が残っていれば、妻に渡し、残らなければ言い訳をする。村は貧しく、女たちはじっと耐えていた。  湿った風が吹き上がるその丘の途中に、古い修道院があった。年老いたシスターが数人、そこで暮らしていた。裏には小さな畑があり、ローズマリーやタイム、オレガノといったハーブや薬草が大切に育てられていた。シスターたちは、中世から伝わる処方に従って、ありとあらゆる薬を作ることができた。村の女たちは家人が病気になると、その症状をシスターに告げ、薬をもらうのだった。     
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