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人は色んな方法で、感情を表現する。 音楽だったり、文字だったり、物だったり、自分自身の体でだったりと。 1人の少女は、絵で表現をした。 微笑む少女の絵だったり、互いに見つめ合う男女の絵だったりと。 沢山の絵を描いて、自分の感情を表現した。 だが描いている内に、少女は気づいた。 絵に感情を込めれば込める程、自分の中から感情が消えて行っていると。 自分の感情が、絵に吸い込まれていると。 だが気づいた時にはもう遅かった。 少女の中に残っている感情は、悲しみだけだった。 その他の感情は、全て描いた絵の中にある。 少女は悲しむ事しか出来なかった。 悲しみの感情しか知らないから。 気付けば少女の周りでは、悲しい事しか起きなかった。 少女は毎日泣いていた。 少女は考えた。 どうやったら、無くした感情を取り戻せるだろうかと。 少女は今まで描いた絵を、じっと見つめた。 絵の中には、少女が失なった感情が、沢山溢れ出している。 そうだ、この絵を燃やしてしまえば、きっと失なった感情が、戻って来る。 そう考えた少女は、今まで描いた絵を、全部持って、海へとやって来た。 砂浜の上に立ち、海を見つめる。 少女は絵を1枚、マッチの火で燃やした。     
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