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燃やした絵は、火に覆われると、灰となり、海へと飛んで行った。
すると少女の心に、1つの感情が芽生えた。
それは喜びの感情だった。
少女は喜びの感情を取り戻すと、海の美しさに喜び、そして何より、喜びを取り戻した自分に喜んだ。
また1枚、絵を燃やす。
次は愛しさと言う感情を取り戻す。
少女は次々と、絵を燃やした。
だが戻って来る感情は、いい物ばかりではない。
憎しみや怒りと言った感情も、取り戻す。
それでも少女は、例え嫌な感情だろうが、いい感情だろうが、関係無く、取り戻して行く事が嬉しかった。
全ての絵を燃やし終わった時、少女は全ての感情を取り戻した。
絵を描く前の自分に、戻れたのだ。
少女は喜んだ、とても喜んだ。
だが少女は、絵を描く事を止めなかった。
再び絵を描き始めたのだ。
その度にまた、感情を失い、また燃やす。
感情を取り戻す度に、また絵を描いて、また燃やす。
その繰り返し。
何故少女は、感情を無くすと知りながら、絵を描き続けたのだろう。
もしかしたら、いつしか絵を燃やしても、感情が戻らなくなってしまうかもしれない。
それなのに何故、少女は恐れる事無く、絵を描き続けたのだろうか。
答えは少女の目が語っていた。
少女の目の前に広がる、キャンパス。
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