3/3
前へ
/3ページ
次へ
世界と言う美しいキャンパスを、描かずにはいられなかった。 そして何より、少女は絵を描く事が、大好きだった。 美しいキャンパスを、自分の絵で表現する。 それが少女の幸せだった。 恐れていた通り、いつからか絵を燃やしても、感情が戻らなくなっていた。 それでも少女は、絵を描き続けた。 最後に残った少女の感情は、やはり悲しみだった。 少女はその悲しみと言う感情を、最後のキャンパスに描いた。 描いたのは、自分の肖像画だった。 泣いている、自分の顔だった。 その絵を描き終えた途端、少女の中の全ての感情が消えた。 そして少女は、感情を持たぬ人形となった。 少女は一日中、無言で表情を変える事無く、海を見つめていた。 少女が最後に描いた、泣き顔の自分。 それは少女が、泣き顔こそ1番人間らしい表情だと思ったからだ。 嬉しい時も、悲しい時も、感動した時も、悔しい時も、どんな時でも涙は流す。 人間は色んな意味を持って、沢山涙を流すのだ。 人形になった少女には、叶わぬ夢だからこそ、泣き顔を描いた。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加