3.再会の希望

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3.再会の希望

 元カノからの忠告。  それを聞いた時点で、さえりさんへの恋愛感情は、瞬間凍結してしまった。    これまではずっと、友里は好きな男ができたから、僕と別れたと思っていた。美男子で女たらしな男性像を勝手に思い描いて、そんな奴を好きになる尻軽女だったのか、と憤り、軽蔑することで少し救われるところがあった。  ところが、現実は違っていて、僕が自分の理想像を押し付けてくるのに耐えられなかったから、友里は逃げていったことがわかったのだ。  自分のせい?そう、自分のせい。  僕は、その短い「疑問ー回答」を頭の中で繰り返した。  二度目の失恋ショック、という言葉や概念があるのなら、僕はその真っ只中にいた。  とても、さえりさんのことを思い出したり、連絡が来るのを期待したりするような気持ちにはなれない。    寂しくてぼんやりする、そんな心理状態が続いた。  僕は、ジョルジュ・ムスタキの「私の孤独」をフランス語の原曲で繰り返し聞き続けた。  僕は一人じゃない、孤独と一緒だから。    この歌を初めて聞いた時、「そんなの、ただの強がりじゃないか。」と思った。でも、それは孤独を友達にしなければならないくらい追い込まれたことが無かったから、そう思えるのだった。今の僕は、ムスタキのこの歌詞が少しわかるような気がしてきた。    沈む心。僕は、一人孤独の中に閉じこもることになった。  ただ、それは、長続きしなかった。何故なら、閉ざされた心の扉を開く出来事が一週間後にやってきたから。
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