3.再会の希望

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 僕は、夢の中でキスをしていた。霧の中のような、ふわふわした場所で。  相手は、さえりさんのつもりでいた。キスをしながら、誰だか確認したくて、唇を離そうかと思ったが、この唇の感触をずっと味わっていたいと思い直した。  やがて顔を離すと、それは、友里だった。  うっとりした表情をしていた。つき合っていた頃のように。  夢から覚めて、何か、とんでもない大事なものを失ってしまったような、焦りに似た気持ちが込み上げてきた。友里は、もういない。さえりさんと再会できるかどうかも、まだわからない。  どうして、友里とキスしていたのだろう? 僕の中で、まだ、友里への想いは生きているのだろうか? この間の彼女からの忠告が、よほど堪えたためなのか?  わからない。  いてもたってもいられなくなって、僕は、スマホの電話帳に残っていた友里の携帯番号を検索して、電話を掛けた。  3コールで出た友里は、「何?」と素っ気なく言った。  「俺だけど。」  「声でわかるわ。」  「あのさ、あの時、訊けなかったんだけど。」  「何?」  「俺って、変れるのかなぁ?」  「さぁ、わからないわ。」  「俺が変わったら、君ともう一度...」  「あのね、誤解しないでね。こないだの話は、言い残したことを言っただけなのよ。」  「そう、そうだね。」    そして、「今日、出かけるので、忙しいから、切るね。」と早口で言って、友里は電話を切った。  僕は、何をしてるんだろう?  友里に電話して、何を確認したかったんだろう? 「もう一度」なんて、何で言ってしまったんだろう? もう戻れないことは、知っていたはずだ。  友里との想い出は、大切にしまっていないで、思い切ってどこかに捨てにいかなければならないのだろう。どこか遠くに出かけていって、そこで、海に沈めるか、山に葬るか、そういう心の整理が必要なのかもしれない。  夢の中のキス。別れた女とのキス。  その切なさをどうすれば忘れることができるのだろうか?
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