始まり《長谷川カズト》

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「……くしゅっ」  小さなくしゃみが出た。  モゾモゾと動きながらゆっくりと目を開けると、青いカーテンの隙間からは朝の光が差し込んでいた。    ……あれ?  ポケットからスマホを取り出し時間を確認すると、朝の七時を過ぎていた。    慌てて飛び起きた僕は、急いでお風呂場でシャワーを浴びた。熱いお湯で全身をくまなく包み込むと、やっと身体が温まる。    どうやら僕は、あのまま夕飯も食べずに眠ってしまったらしい。  暖房は付けていたものの、この季節だと布団を掛けないと身体が冷えきってしまう。  風呂場から出るとすぐに髪の毛を整えて、ついでに昨日買った惣菜をパパっと口の中に放り込む。  大好物の唐揚げを味わう時間がないのは残念だけれど、急いで飲み込むと歯を磨く。  そして、紺色のスラックスに白のワイシャツといういつもの出で立ちに着替えると、その上に分厚いアイボリーのニットセーターを重ねて、黒い長めのピーコートを羽織り急いで家から出た。
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