165人が本棚に入れています
本棚に追加
/327ページ
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
玄関の中で母に送り出されると、外にでてはまず深呼吸をする。
冷たい空気を肺に思いっきり取り込んだ瞬間、何かから解放されたような気持ちになった。
芝の上に等間隔に敷かれたアイボリーのタイルの上を歩くと、両脇には母が毎日欠かさず手入れしているパンジーの花が植えられていて、小さい頃は「花道」なんて大袈裟な名前をつけていた。
だけど、十七歳になった今でもこの風景が好き。
家から門までの距離はたったの数メートルだけれど、まるで内界と外界の間にある楽園のような存在。私にとっての憩いの場。
「……よし」
小さく気合いを入れると、胸の辺りまであるアーチ状の鉄製の門を開ける。
__また、新しい一日が始まる。
まだ疲れが残る身体で無理に軽快なステップを踏みながら、私は学校まで向かった。
最初のコメントを投稿しよう!