一・始まり《中島ミツハ》

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「ミツハは、切らないの?」 「んー。ずっと伸ばしたままだし、今更イメチェンする勇気はないかな」 「でも、スタイル良いしショートカットも似合うと思う」 「そんなことないよー。それに、ショートカットにしたら、私だって認識されなさそうじゃない?」 「あ、確かに。艶々の黒髪ロングはミツハのトレードマークだもんね」  いつの間にか、定番となった腰位の位置に切り揃えられた黒髪。  一番古い記憶だと小学生の頃になる。毎晩毎晩、母に櫛を通してもらっていた。  そのお陰で天使の輪が出来る程の艶やかな髪の毛は、自分自身も気に入っている。  しかし年頃の女の子達が、お洒落に目覚めては自分に似合う髪型を探求している姿に、影響を受けないかと言ったら嘘になるけれど。  「ミツハはロングが似合う」と、口癖のように言う母の言葉には敵わない。
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