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「冬はマフラーいらずだしね」と、ふざけて長い髪を首に巻く私を見てユウコは声を出して笑う。
しかし急に真顔になると、グイッとソバカスのできた顔を近づけた。
「ミツハ、夜更かしした?」
「え?」
「目の下に隈できてるよ?」
人差し指で皮膚をトントンと優しく叩かれた瞬間、脳裏に今朝の出来事が甦った。
「……爪が汚れてて」
「え?」
「今朝起きたら、爪に身に覚えのない汚れがついてたの。その前はスマホの位置が変わっていて…。そういう時は、決まって寝てるのに疲れが取れていないんだよね…」
「何? それ」
唇を尖らせると、ユウコは首を傾げる。しかしすぐに何かを思い付いたのか「あ」と、小さく声を上げた。
「寝てる間に動いてるってやつだ! えっと……、夢遊病だっけ?」
「……うん。でもね、お母さんは気のせいなんじゃないかって。だから気にしないようにしようとは思ってるんだけど…」
掠れた声。
知らない人の名前。
身に覚えのない汚れ。
正直、気になってしょうがないけれど、母に頭の可笑しな子だと思われたくない。
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