164人が本棚に入れています
本棚に追加
/327ページ
……ビール飲みたい。あ、唐揚げも食べたいな。
白い息を吐きながらマフラーに顔を埋め一人歩いていると、隣接した私立高校の敷地から女子生徒達がゾロゾロと歩いて来る。
僕自身が通っていたのも現在務めているのも、男女共学の公立高校。だから、女子高校という世界は想像がつかない。
「よし! 今日は、カラオケでも行くか!」
「いいねー! 行こ行こ!」
しかし目の前を横切って行く生徒達の台詞に、何処も同じようなものかと苦笑する。
本当、最近の子ってカラオケが好きだよな。と、思いながら何気なく顔を上げた瞬間、足が止まった。
……僕は、相当疲れているのかもしれない。
艶やかな長い黒髪が夕焼けの光りに照らされる。俯いた顔には長い睫毛が影をつくり、ぷっくりとした小さな唇はほんの少しだけ開かれている。
呆然としていると、目の前から歩いて来た女子生徒が顔を上げた。
__カズミ?
そんなはずがない。そんなわけがない。
そうわかりながらも、気づけばキミの名前を口にしていた。
最初のコメントを投稿しよう!