始まり《長谷川カズト》

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 ……ビール飲みたい。あ、唐揚げも食べたいな。  白い息を吐きながらマフラーに顔を埋め一人歩いていると、隣接した私立高校の敷地から女子生徒達がゾロゾロと歩いて来る。  僕自身が通っていたのも現在務めているのも、男女共学の公立高校。だから、女子高校という世界は想像がつかない。   「よし! 今日は、カラオケでも行くか!」 「いいねー! 行こ行こ!」  しかし目の前を横切って行く生徒達の台詞に、何処も同じようなものかと苦笑する。  本当、最近の子ってカラオケが好きだよな。と、思いながら何気なく顔を上げた瞬間、足が止まった。  ……僕は、相当疲れているのかもしれない。  艶やかな長い黒髪が夕焼けの光りに照らされる。俯いた顔には長い睫毛が影をつくり、ぷっくりとした小さな唇はほんの少しだけ開かれている。  呆然としていると、目の前から歩いて来た女子生徒が顔を上げた。  __カズミ?  そんなはずがない。そんなわけがない。  そうわかりながらも、気づけばキミの名前を口にしていた。
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