十・深怨 《中島ミツハ》

21/21
前へ
/327ページ
次へ
 だって深怨は、私にとって温もり。親を知らない私が、初めて触れた母の温もりだった。  そして血のように固まることもなく、涙のように乾くこともない。娘への溢れ続ける母性……。 「……お母さん。長谷川先生」  そっと名前を呼ぶと、二人の頬にキスをしながら、手を強く握りしめる。  ……この瞬間だけは、紛れもなく私のもの。   「……おやすみなさい 」  __そして母の深怨(ぬくもり)に抱かれながら、私はゆっくりと目を閉じた……。
/327ページ

最初のコメントを投稿しよう!

169人が本棚に入れています
本棚に追加