始まり《長谷川カズト》

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 ふらふらと歩いて駅まで向かうと、そのまま電車に乗り込み二駅揺られて降りる。  深夜までやっているスーパーで、値引き品の惣菜と缶チューハイを二本買って家に帰った。    カサカサと買い物袋をぶら下げて、白い外装の築五年になる二階建てアパートの階段を登ると、一番端の扉に鍵を差し込み扉を開けた瞬間、やっと息が吸えた気がした。   「……ただいま」  地元の高校を卒業して大学進学と同時に上京してきた僕は、早十六年一人暮らしをしているというのに、未だに誰もいない部屋に挨拶をする癖が抜けない。  それはどこか心の片隅に、キミが側にいてくれるかもしれないなんていう、妄想を抱いているからなのかもしれない。  普段、幽霊の存在を否定しているくせに、今日みたいに弱っている時にはキミの存在を感じて眠りにつきたいとさえ思う。  ……自分勝手だよな。  一人苦笑すると、八畳一間の部屋に置かれたベッドの上に横になる。  勉強机に本棚という、必要最低限の物しか置かれていないこの部屋は、僕の憩いの場所だ。
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