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すると相手も私をジロジロと眺めていたかと思ったら、一度視線を外し微笑んだ。しかしその瞳の奥は、何処か悲しそうで何かに悔いているように見えた。
「もし、何か話したくなったら連絡して欲しい」
「…え」
言葉のニュアンスに思わず眉を潜めていると、相手が私に紙を握らせた。
チラッと顔を伏せたついでに確認すると、どうやら連絡先が書いてあるようだ。
「怪しいと思うなら、まずはここに書いてある学校の電話番号に掛けてみて。長谷川って言えば、僕の学校には一人しかいないからすぐわかるよ」
「……な、何で」
「え?」
本当は単刀直入に「カズミ」とは、誰かを聞きたかった。だけど、それを聞いてどうするのだともう一人の自分が言っている。
今朝も聞こえた名前と、この人が呟いた名前は同じだけれど、それ以上でもそれ以下でもない話しではないかと。
「どうして私に構うんですか?」
「じゃあ、キミはどうして僕を避けるの?」
どうやら私達は、お互いを探り合っているようだ。
相手も、私の態度に気づいている。
だから「悩みがあったら聞くよ」ではなく「話しがあったら聞くよ」と、言ったのだろう。
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