二・接触 《中島ミツハ》

9/15
165人が本棚に入れています
本棚に追加
/327ページ
 すると相手も私をジロジロと眺めていたかと思ったら、一度視線を外し微笑んだ。しかしその瞳の奥は、何処か悲しそうで何かに悔いているように見えた。 「もし、何か話したくなったら連絡して欲しい」 「…え」  言葉のニュアンスに思わず眉を潜めていると、相手が私に紙を握らせた。  チラッと顔を伏せたついでに確認すると、どうやら連絡先が書いてあるようだ。   「怪しいと思うなら、まずはここに書いてある学校の電話番号に掛けてみて。長谷川って言えば、僕の学校には一人しかいないからすぐわかるよ」 「……な、何で」 「え?」  本当は単刀直入に「カズミ」とは、誰かを聞きたかった。だけど、それを聞いてどうするのだともう一人の自分が言っている。  今朝も聞こえた名前と、この人が呟いた名前は同じだけれど、それ以上でもそれ以下でもない話しではないかと。 「どうして私に構うんですか?」 「じゃあ、キミはどうして僕を避けるの?」  どうやら私達は、お互いを探り合っているようだ。  相手も、私の態度に気づいている。  だから「悩みがあったら聞くよ」ではなく「話しがあったら聞くよ」と、言ったのだろう。
/327ページ

最初のコメントを投稿しよう!