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「キミが話してくれたら僕も話すよ」
そう言って爽やかに右手を上げて去っていく姿に、ムッとする。
自分から話し掛けてきたくせに、手の内を明かさないのは狡いと思った。
しかし、相手が声を掛けた凡その理由は検討がつく。
この顔を見てあの名前を呟いたということは、その人と私は似ているのだろう。
だがその人とその人の名前が頭の中から聞こえてくる私は、何か関係があるのだろうか……。
「見ーちゃった!」
突然、身体が揺れたと思ったら首元に抱きついたユウコが、ニヤニヤと笑っている。
「いいなー。あの人、隣の公立高校のイケメン教師で有名だよ。長谷川先生だっけ? さすがミツハだね」
確かにイケメンだとは思ったけれど、まさかこの学校でも有名だとは知らなかった。
「連絡先聞かれたんでしょ?」
「……いや。連絡先渡されたの。きっと、今にも自殺しそうに見えたんじゃない?」
「それはないよー」
ケタケタと笑うユウコは、私の手から紙を奪い取ると、筆圧の濃いしっかりとした字をジロジロと眺めている。
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