二・接触 《中島ミツハ》

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「ミツハのお弁当って、本当にいつも美味しそうだよね」 「ありがとう」  我が家は母子家庭で、それも専業主婦の母との二人暮らしだけれど、家計に苦労はしていない。  昔、母が働いていた貯金やら祖母の亡くなった遺産やら、離婚した父からの養育費やら色々頂いているのだという話しは、聞いたことがある。    だけど、やっぱり早く一人立ちして母を養ってあげたい。それもまた、母に「自慢の娘」だと褒めてもらいたいだけの理由だけれど。 「中島ー」  廊下から、生徒の名前を呼ぶ担任の声が聞こえる。その瞬間、何故か顔を上げたユウコが私のことを見ている。  何?と、思って首を傾げていると、突然近くで声がした。 「中島!」  ビクッと肩を上げて振り返ると、眼鏡をかけたおじさんが私の後ろに立っていた。 「中島ミツハ」  __ナ カ ジ マ ミ ツ ハ。 「どうした、ボーッとして?」  ……あ、そうだ。中島ミツハは私だ。
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