二・接触 《中島ミツハ》

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「中島。聞いてるのか? 先生は成績が良いのに進学しないのは勿体ないと思う。だから、もう一度良く考えなさい」    そう言うと担任は職員室へと戻って行った。  ……せっかく。勿体ない。  そう言われても、決して勉強が好きなわけではないし、進学の為に勉強していたわけでもない。  __それに今は進路よりも自分の頭が心配だ。  放課後になると部活に行くユウコと教室で別れ、校門を出た私はいつもとは逆方向へと歩き始める。  母には予め「学校に残って勉強をする」と、メールを送っておいた。嘘をつくのは心苦しいことだけれど、これは母に無駄な心配をかけさせない為だ。  ピーコートに両手を突っ込み赤いマフラーに顔を埋めながら、校門から少し外れた場所に立っている大きな杉の木に身を預ける。  そして校門から男女の波が押し寄せてくるという、女子校の私には想像がつかない光景を眺めながら時間を潰した。
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