接触 《長谷川カズト》

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「長谷川先生、今日はスマホばかり見てどうしたんだ?」  隣の山田先生に言われるまで、自分がスマホと睨めっこしていたことに気づかなかった。   「ちょっと……」  一つ考え事をすると他の事が疎かになるところは、昔からの悪い癖だ。  しかし時間が経つにつれて、今朝の自分の行動に不安を覚えていたのだ。  見ていた男子生徒がナンパと勘違いしていたように、彼女本人にもそう思われていたら嫌だなと思って。  だけど僕のことを見て逃げることは確かで、理由もないのに避けたりはしないだろう。  どうしても気にかかり連絡先を渡してしまったが、やはりあれはナンパの域に入るのだろうか。  結局、彼女から連絡は来ないまま、一日が終わった。  たった半日で、人の気持ちが大きく変化することはないということは、理解している。  しかし、彼女から接触して来ない限り避けられている理由も、カズミとあれ程までに似ている理由も知ることはできない。  いや、もしかしたらそれこそ僕の思い過ごしで全てに理由すらないのかもしれないけれど。
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